2-2 SSHフレンズ活動報告〜ミニバスケット救護を中心に〜

生 年 月 日 昭和51年9月21日生
開業年月日 平成18年5月
開 業 場 所 帯広市西19条南2丁目14−6
卒業年月日 平成10年3月卒
出 身 校 北海道柔道整復専門学校

中原 和彦
(十勝ブロック)

<<はじめに>>

今回、十勝ブロックにおける「SSHフレンズ整骨・接骨・北海道」競技医療救護ボランティア活動の中で最も出動要請が多かったミニバスケットボール大会で応急処置を施した負傷者を対象とした統計に考察を加えて報告する。

<<目 的>>

十勝ブロックにおいては、SSHボランティア活動として健康福祉フェア、柔道大会、ミニバスケットボール大会等に積極的に参加している。平成23年度は競技医療救護ボランティアとして53回、合計108名の十勝ブロック会員が出動した。その中でもミニバスケットボール大会への出動要請が最も多く47回であった。そこで今回、ミニバスケットボール大会競技中に負傷した選手を対象に応急処置を施した負傷部位、負傷名、原因を分類した。

<<方 法>>

・期間 平成23年1月より平成23年12月までの1年間。
・対象 救護ボランティア活動中の応急処置を受けた小学生、男女73名(男29名・女44名)、年齢8歳〜12歳。負傷77部位。

部位別によると、膝23件、足首25件、腰11件、指(DIP・PIP)6件、下腿部1件、手首3件、肘2件、肩2件、大腿部2件、頚部1件、前腕部1件であった。
負傷名別は捻挫70件(オーバーユースによる関節の痛み7件含む)、打撲3件、挫傷4件であった。膝関節捻挫13件の内、内側側副靱帯損傷が12件。足関節捻挫25件で内返しによる前距腓靱帯・前脛腓靱帯損傷が23件と多かった。骨折・脱臼と判断して緊急に医接連携を取った症例は無かった。
原因別で多いのは、転倒13件、相手と接触7件、ランニング動作(ダッシュ・ターン・ストップ)14件、ジャンプ着地5件などであった。

<<考 察>>

北海道におけるミニバスケットボールの競技人口は7194人であり、十勝管内の大会では男女合わせて53チーム、総勢850人が参加する規模で開催されている。小学生のバスケットであるが上位チームとなると激しくプレーし運動量も相当なものであり、負傷の瞬間を目撃する事も少なくなく、負傷の状態を把握する為にも常駐場所からのプレーの観察も欠かせない。今回の統計の結果では、その競技特性として選手同士の接触プレー、転倒が多く、それに伴った外傷と急激なストップ・ダッシュ・素早い方向転換・ジャンプの繰り返し、ジャンプした際にバランスを崩し着地に失敗するという原因により膝関節、足関節の外傷・障害を発生した症例が多かった。
現場の対応として靱帯損傷・筋損傷分類で損傷の評価を第㈵度と判断した場合には競技復帰する為の応急処置としてテーピングを施した。また、第㈼度以上の損傷と判断した場合には選手、保護者、監督に損傷の程度を説明し運動の中止を提案する。
骨折の可能性のある外傷は、インフォームドコンセントが重要である。特に注意しなければならないのは発生頻度の高い足関節の内返しによる負傷である。特に10歳以下で発生する内返し損傷で外果周囲の腫れを伴うものは、多くの場合、外果の裂離骨折を起こしている可能性が非常に高いという報告があり、安易に捻挫と判断する事は出来ない。また、今回の症例では頭部外傷は無かったが昨今、柔道競技で発生した頭部外傷が重大な事故につながっていた事がマスコミ等で取り上げられ話題になっているが、我々もリスク管理として医接連携を踏まえて慎重に対応していかなければならない。

<<まとめ>>

小学生男女ともに応急処置の最中に話を聴くと「数日前から痛かった」、「ずっと前から痛かったが我慢していた」との回答が複数得られた。選手達は、「練習を休むと選手になれない」、「怒られる」という環境、事情により監督に傷めている事を伝えていないという理由が非常に多かった。また、負傷しているが医療機関で加療していない。練習量過多等の複雑な事情があり、選手・保護者・監督との十分な信頼関係が構築されていない現状のボランティアの立場としては容易に介入出来ない問題が多々あるのというのが現実である。
我々は、偶発的、突発的な外傷は防ぐ事は出来ないが反復、継続した運動で発生した亜急性のスポーツ外傷・障害等に対しては、骨、関節、筋、腱、軟部組織等の運動器を扱う専門家である柔道整復師として積極的にアプローチし適確なアドバイスをすることで外傷・障害の発生を最小限にする事が可能であると考える。
十勝ブロックでは、日本体育協会認定アスレチックトレーナーを講師として招聘し、現場で活用出来るテーピングテクニック講習を開催し、現場での要求に十分に対応出来るように運動器の専門家として資質向上を目指し技術の研讃に努めている。
公益社団法人の認定を受けた北海道柔道整復師会の会員として、今後も公益性を認知され信頼を得ていくため、我々は「SSHフレンンズ」活動を通して、より広く社会に対して啓蒙し、地域社会に対して貢献していかなければならない。我々柔道整復師が医療の一端を担う職務であるということを今後も積極的にアピールしていく為に、より多くの会員が参加、活動していくことが不可欠であると考える。また、これからの課題として、より多くのスポーツ競技の現場に参加していく事と、それらの競技特性に関しての研究を継続して行い、比較検討し今後も追加報告していきたい。