生 年 月 日 | 昭和49年5月5日 | 開業年月日 | 平成20年1月7日 | 開 業 場 所 | 札幌市厚別区大谷地東3丁目5‒10 厚別おおやち整骨院 |
卒業年月日 | 平成11年3月卒 | 出 身 校 | 北海道柔道整復専門学校 |
唐牛 拓郎
(札幌ブロック)
<<はじめに>>
運動をしている方の怪我には、中・高生のようなオーバーワークが起因となっているものと、中・高年に多くみられる準備運動不足等が起因しているものに分けられると思います。今回は後者の方で、特に肉離れの治療で表題の電気刺激を使用しながら、固定期間を極力短くして早期のスポーツ復帰を果たした症例をご紹介致します。
まず、怪我の際にはRest=安静、Icing=冷却、Compression=圧迫、Elevation=挙上の処置をできるだけ早い段階で行うことが重要になります。その中の冷却ですが、これは氷や流水を使用するということで、湿布の貼付とは違うことを患者には説明しています。
次に、肉離れの分類と危険因子ですが、最近特徴として次の3つがわかってきました。
① 損傷筋には形態的特徴がある(多くは羽状筋の形態を持つ)
② 受傷機転は、遠心性収縮である。
③ 損傷部位は筋腱移行部または、筋と筋膜の移行部である。
また、分類としては次の3つに分けられます。
Ⅰ度:一般的には軽度な痛みで、筋腱複合体の最小限の損傷
Ⅱ度:筋力や可動域が制限される筋腱移行部の損傷
Ⅲ度:非常に大きな負荷による筋腱移行部の断裂
危険因子としては、筋疲労・再発・柔軟性、コンディショニングの低下、ウォーミングアップ不足等があります。
発生機序と症状ですが、下肢に多いのですが大腿四頭筋では大腿直筋に多く、股関節伸展位・膝関節屈曲位で収縮させた時に発生しやすい。また、ハムストリングでは屈筋群が収縮しようとしている状態で、伸展された時(遠心性収縮)に発生しやすいといわれています。症状には、腫張・硬結・皮下出血斑・受傷部の陥凹等がみられ、肉離れの際音が聴こえたり、受傷筋の脱力を感じることもあります。
<< 症例 1 >>
49歳男性。朝野球でファーストに走り始めた際「プチッ」という音がして受傷。力が入らなくなりランニング不能、歩行は足関節を底屈させずに足裏全体で着地すると可能という状態でした。当日のお昼に来院され、内側腓腹筋中央部に陥凹あり、その周辺に皮下出血も確認できました。
<<処置と治療>>
患者を腹臥位で足関節0度を保持しながら、受傷筋の付着部とアキレス腱移行部にゲルを貼付し、微弱電流を30μAで通電しながら氷嚢で冷却し、ベルトで圧迫を掛けながら20分。その後高圧電流で、筋収縮が起こらないよう10V位の弱さで5分程度通電し、テーピングで固定しました。同様の治療を2回行い、歩行も自然な状態に戻ったので、4回目からは筋収縮を軽くさせるモードに変更し、最後に超音波と高圧電流を同時に、硬結部位に通電するようにしました。同様の治療を3回繰り返し行い、症状も改善され疼痛も消失した為治癒としました。
<< 症例 2 >>
41歳女性。テニス中、重心を横に移動した際Ⅰ度の軽い肉離れを受傷。症例1と同様に微弱電流と高圧電流で治療を行い、状態が良くなってきたのでテニスの練習を再開し、荷重をかけた際同部位を再受傷。次の日に来院されましたが、踵を接地しての荷重不可で強度の疼痛と皮下出血も見られました。
受傷時のコールドスプレーで凍傷も起こしており、直接患部への治療もできないことから、受傷部位を挟んで微弱電流と、筋収縮を起こさない程度の高圧電流を通電し、最後に凍傷部位をガーゼで保護してから非伸縮包帯で固定という治療を3日間行いました。歩行が通常に戻ったので、アイソメトリックから筋トレも始め受傷から約2週でテニスに復帰しました。
結果として、最初に固定のみをしてその後治療を行っていくよりも、微弱電流を通電しながら固定をした方が治療期間の短縮につながっており、そのことから次のことが早期復帰に有効と考えられます。
- 早い段階でRICEの処置を行いながら、微弱電流で損傷部位の修復を促す。
- 高圧電流を通電し、疼痛の軽減を図る。
- 患者の環境も考慮して、どの方法の固定を行うか検討する。
私の場合は、以上のことを基本に症状等を考慮し、治療を行っております。
<<参考文献>>
- 第26回臨床研究会講演資料
- 柔道整復論
- 整形外科学