生 年 月 日 | 昭和28年1月1日 | 開業年月日 | 平昭和54年11月5日 | 開 業 場 所 | 旭川市東鷹栖2線14号 | 卒業年月日 | 昭和54年3月卒 | 出 身 校 | 北海道柔道整復専門学校 |
大辻 弘
(旭川ブロック)
<<はじめに>>
最近の新聞やマスコミ等では、日本各地域において少子高齢化が早いスピードで進んでいる事が伝えられています。
特に農漁村や経済産業基盤が脆弱な地域においては益々疎開が進んでいるのが見受けられている今日、地域より小さな単位である家族や家庭、職場、学校までもが廃校の現実を突きつけられており、弱者と言われる高齢者、特に独居の方々においては大変厳しい状況だと言わざるを得ません。
介護や支援を一切受ける事無く、生活している高齢者の患者さんに起こったアクシデントを通して、ここに症例報告いたします。
<<所見>>
1 年令87歳 女性
2 生活環境 独居 一戸建住宅
3 左胸部第4,5肋骨側胸部に局所圧痛と微熱
4 寝返りや左上肢の運動にて悪化する疼痛
5 睡眠不足等
<<原因>>
平成24 年9 月10日に自宅浴室で湯船の端に左胸部より倒れ込み、局所部位を強打し、入浴せずに2 日間寝込み来院される。
<<既往歴とその経過>>
患者様は平成24年1月に下旬に左胸部帯状疱疹を発症。
交通手段及び独居、食事等にも苦慮している。通院不可能と診断され入院加療を約2ヶ月間、退院後は2週間に一度の通院を続け、平成24年7月下旬にて治癒されました。
小康状態を保ち生活している内に8月中旬に激しい痛みと呼吸困難を訴えて再度主治医を受診し帯状疱疹後神経痛と診断を受け、通院を続けている状況。
<<鑑別のための病態の把握>>
問診、視診、触診を進めるものの、打撲による痛みとは異質な点を考慮し、肋骨部の骨折の有無の確認を行う。
胸部への圧迫テストによる骨折痛及び検打器による検査を試みるものの激痛増悪がみられたので、主治医に依頼を求めたところ、主治医からは、打撲の診断を受け、帯状疱疹神経痛と併用し除痛と打撲の回復を協力し、施術に当たる事になりました。
主治医からは、冷湿布の貼布は止められ、電療も経過観察を充分にした上で徐々に開始する様指示を受け、患部へのガーゼ包帯にて軽い固定を主とし血流回復に努め、後療も9月15日より開始する。
9月29日 局所圧痛、腫れ、熱感の減少を確認、
10月6日 局所圧痛の消失を確認、 打撲による諸症状は回復し終了とす。
尚 帯状疱疹の発症病態について簡略に説明を加えると
- 本疾患の発症の最も大きな要因は加齢であり、細胞性免疫力の低下は発症頻度を増加させる。
- 50 歳まではほぼ一定に発症するものの50 歳以降では直線的に増加し10歳以下のほぼ5 倍弱の頻度で発症する。
- 好発部位は三又神経第1枝で20%、第4胸髄支配域で10%と多く性別比は女性に多く発症。
本疾患の前駆症状として神経痛様の激痛と感覚異常やそう痒感が見られ、数日〜 1 週間後に破れて、びらんを呈し、2 週間目には治癒に向かう。
3週間目には脱落し、色素沈着、瘢痕を残す場合も多く、治癒する。
今回体験した帯状疱疹後神経痛は多くの高齢者に長期に渡り慢性的、回帰的に出現する疾病の1 つであり、注意と意識改革が必要であり、高齢者や独居にて対人、対地域社会とのかかわり方が少ない方々には相談する機会も少なく、諦めや、うつ病傾向へと進むものと考えられます。
<<結論>>
左胸部打撲による初検時の疼痛及び運動痛の消失は良い結果を得られましたが、今一度残存する帯状疱疹後神経痛と言う慢性的で疼痛も強い症状からの解放される期間が不鮮明で季節の変り目等にて再発症する特徴の病態に対し、私ども地域に根ざす柔道整復師として医師の協力、指導、助言をいただきながら連携を保ち、正確な情報を正しくわかりやすく伝える柔道整復師の1 人として、
学術研鑽に努力して参りたいと思う貴重な体験をした1症例でありました。
<<参考文献>>
帯状疱疹Up-to-Date(診断と治療社)