二分靭帯の1固定法として  近藤 勝大(小樽ブロック)

生 年 月 日 昭和48年12月6日
開業年月日 平成17年1月5日
開 業 場 所 小樽市桜2–1–26
卒業年月日 平成7年3月12日卒
出 身 校 東北柔道専門学校
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近藤 勝大
(小樽ブロック)

<<はじめに>>

足関節捻挫は日常よく遭遇する外傷の1 つであり関節に作用した力の方向により外反、内反捻挫があるが今回は内反捻挫の中でも二分靭帯のみの損傷と判断して施術した症例について報告します。

 

二分靭帯(Y靭帯)は前距腓靭帯の前下方にあり踵骨と立方骨間の踵立方靭帯、踵骨と舟状骨間の踵舟靭帯の2 つの靭帯からなりショパール関節(横足根関節)の安定に関係し後足部に対して前足部の内反が強制された時に損傷しやすく多くは足関節の内反と同時に前足部の内反が強制され足関節外側の靭帯損傷と同時に損傷することが多く、二分靭帯のみの損傷は極少数と思われる。当院ではH23 、1 月〜H24 、4 月までの期間で63例中4 例( 6 %)を二分靭帯のみの損傷と判断した。
初検時に損傷後速やかに強固な固定をし患部の安静を保つことによって経過良好なことを説明して患者さんに納得して頂き急性期はシーネを作成して固定する、腫脹・圧痛・患側加重時痛が軽減した時点でテーピング固定に変更して施術しているがテーピングによる痒み・発赤・体毛の問題・通院出来ない時のテーピング緩み等で不便を感じ伸縮包帯を用いてテーピング同等の固定力が得られれば不快な症状・不便を出さないで施術が可能と考え良好な結果が得られたので報告します。

<<方法>>

固定方法1 (熱可塑性キャスト材使用)

ストッキネットの下巻き材の代わりに靴下の足指の部分をカットし履かせて足関節90°前足部内反・外反中間位を保持し商品名レナサーム(幅10 ㎝)の2 〜 3 枚重ねを下腿内側下1 / 3 から当てて→内果→踵骨後部を除いて内側アーチ部→足底→第五中足骨基部がシーネの中心になるように当てて下腿外側1 / 3 で終わり水で十分に濡らした綿包帯で手早く全体を巻き直後に足アーチ・内果・外果に両手を体の凹凸に合わせてモデリングしながら硬化を待ちます、硬化後靴下を鋏で切って取り外し内・外果部に薄い綿を入れて再装着後綿包帯を巻き固定する。
シーネの中心を内側アーチ(舟状骨部)・第五中足骨基部を通して成形することで踵部〜中足骨部まで固定しショパール関節(横足根関節)・リスフラン関節(足根中足関節)の固定、後足部に対する前足部の回内・回外の抑制をして損傷靭帯の保護が可能となる。靭帯損傷が軽度の場合は患側加重可能、部分加重可能となる場合もあるが杖を使用し出来るだけ患側加重しないように指導している。

固定方法2 (伸縮包帯と綿包帯を使用)

シーネ作成時の考えを基に損傷部位を保護しながら足関節の可動域を確保し歩行しやすくする為の固定と考え下記の方法になりました。
足関節90°・やや外反位を保持し足関節が外反するように伸縮包帯(幅75㎜)で8 の字固定(外果上方から足関節前面→内側アーチ(舟状骨)→第五中足骨基部→足関節部前面→内果上方)この状態で30 ㎝程の長さの綿包帯を幅2 〜 3 ㎝にして内果→足関節前面→外果を結ぶ様に置き既に巻いてある伸縮包帯でテーピングのヒールロックと8 の字固定を2 〜 3 回繰り返し巻くが内側のヒールロックに綿包帯を巻き込まないようにし、巻き終えたら綿包帯の両端を持ち上げ軽く前方に引っ張り足関節前外側で結ぶ。

<<結果>>

対象者4 名 19才〜75 才 全て女性
シーネ固定から除去までの日数は5 〜22 日
シーネ固定から包帯固定への変更のタイミングはシーネ装着のまま歩行可能で腫脹・圧痛が軽減し固定除去して患側加重できるが痛みは残存している時とした。
裸足で院内10 mの距離を真直ぐに歩行した時の痛みを10 点として包帯固定後に同様に歩行した時の痛みがどの程度か比較してみると4 〜 7 点に軽減していた。

<<症例1>>

19才・女性

9/16

体育館で縄跳びをしていて縄が右足に引っ掛かり右足背部を床に付けるように転倒し負傷。

9 /17

初検時、破行あり、立位患側加重で痛み増悪、足関節底背屈・内反時痛あり、足外側部腫脹あり、二分靭帯部圧痛あり、シーネ固定後に患側加重すると痛みは有るが先程ではないとのこと、極力患側に負荷を掛けないように指導。

9 /21

腫脹・圧痛・足関節底背屈・内反時痛・患側加重時痛軽減し本人の希望も有り伸縮包帯固定に変更、患側加重時・歩行時に軽度の痛みがある。学校の関係で1週間程度通院出来ないかもしれないとのことで必ず固定し帰宅後はアイシイングするように指導。9 /29歩行時痛無し、圧痛ほぼ無し、足関節底背屈・内反時痛ほぼ無し。本人の希望で施術終了。

<<考察>>

伸縮包帯を綿包帯で持ち上げて結ぶ時に内側のヒールロックも一緒に結ぶと足関節前面に圧が加わり過ぎ痛みが出現する。(歩行時に足関節が底背屈し綿包帯によって前脛骨筋腱、長母足指伸筋腱、長足指伸筋腱が圧迫される為の痛みと思われる)内側のヒールロックを外して結ぶことで前足部まで固定した8 の字、外側ヒールロック部分にテンションが掛かり内側アーチ・外側アーチの保持、踵部の安定、足関節内反を抑制する。以上の効果があり歩行時痛の軽減になると考える。
固定力を強くしようと思い伸縮包帯にテンションを掛けて巻くと歩行時に損傷部の痛みが出るので伸縮包帯にシワが出ない程度のテンションで巻き綿包帯の締め具合で調整している。

<<まとめ>>

包帯固定にすることによって全治までの期間を短縮することはできないが必要な固定力を得ることは出来たと思われる。これまで施術した患者さんにスポーツをしている方、重労働の方はいないので激しい動きにどこまで対応できるかは不明だが今後の課題として考える必要がある。固定法を数多く持つことにより患者さんの生活に合った選択をして負担の少ない施術にする為さらに改善したい。

<<参考文献>>

骨格筋の形と触察法(医学書院)
触診解剖アトラス(大峰閣)
スポーツ障害の理学療法(三輪書店)